2010年度

2010年度関東支部総合部会年間テーマ

「人体組織の医学・医療上の利用をめぐる倫理問題」→趣意書


◆3月例会(第199回総合部会例会)

日時:3月5日(土) 14:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

アクセス:http://www.sophia.ac.jp/J/sogo.nsf/Content/access_yotsuya

演者:船木 祝氏(司会:小山 千加代氏)
演題:グリーフケアについての哲学的考察
要旨
世界保健機関は、緩和ケアにおいて、「生命を脅かす疾患による問題に直面し ている患者」だけではなく、その家族をもその対象としなければならないことを 強調している。そして、その実施項目として、家族が、「死別後の生活に適応で きるように支える」ことを明記している(2002年WHO)。一方、坂口幸弘氏らの 調査によれば、わが国ではまだ、死別後の遺族ケアを提供している施設は、ホス ピス・緩和ケア病棟以外では少数となっている。わが国におけるグリーフケアの パイオニアとも言える、哲学者アルフォンス・デーケンは、悲嘆は、専門知識や 技術を駆使して客観的に解決できる問題ではない点に、その難点を見出している。 その一方で、喪失や別離は誰にでも起こり得るものとして、それに対し準備する ことの必要性を説く。小此木啓吾氏は、すでに30年ほど前に、現代社会における 悲しみを遠ざけようとする風潮や、悲嘆に苦しむ人の孤立化する傾向を指摘して いる。本発表は、グリーフケアの現状を踏まえ、かつ諸分野の識者の見解を参考 しつつ、グリーフケアのあり方について哲学的に考察することを目標とする。

専門:哲学 医療倫理
所属:明海大学歯学部

参加費:300円


◆2月例会(第198回総合部会例会)

日時:2011年2月6日(日) 15:00~17:30
会場:東京医大病院 教育棟2階 セミナー室 201
※地図(pdfファイル)はこちら

演者:浜田正氏(司会:福田誠二氏)
演題:Subjetsからparticipantsへの困難な途
―臨床研究倫理指針再考(仮題)
要旨
厚生労働省は臨床研究の倫理指針を2003年に作成し、2008年に改定が行われた。改 定は、①医学研究者への倫理講習会受講義務付け(研究機関の長;倫理講習会実施義 務)②被験者・研究協力者の有害事象への補償義務(保険措置)③介入研究の場合、 データベースへの登録義務④個人情報保護;匿名化・連結可能匿名化・連結不可能匿 名化⑤有害事象の報告義務、等である。本発表では、改定の論議が行われた厚生科学 審議会科学技術部会(07~08年)[a臨床研究倫理指針の対象範囲と研究の類型b研究 の倫理c有害事象の補償・賠償、補償の保険d欧米における規制と倫理審査委員会e国 内;倫理指針の運用状況調査f臨床試験登録と研究倫理g改正案]の議論を考察しながら、臨床研究の倫理指針のも つ意義(改定の意義)と問題点を明らかにしていきたい。その際、重要となるのが、 臨床研究の対象である人間存在の臨床研究における「地位=在り方」である。被験者 Subjectsという在り方から研究協力者participantsという人間的な在り方への移行は 困難な途となっているのではないか。

専門:倫理学、哲学、生命倫理
所属:首都医校

参加費:300円


◆1月例会(第197回総合部会例会)

日時:2011年1月8日(日) 15:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:大井 賢一氏(司会 小阪康治氏)
演題:がん患者はどのように共同意思決定を行うのか?
―状況要因および決定因子をめぐって―
要旨
がんは1981年からわが国の死因の第1位を占め、年間30万人以上が亡くなって いる。年間50万人が新たにがんと診断され、治療選択の意思決定を行っている。 現在、がんと向き合う300万人のうち、151万8,000人は継続的に医療を受けてお り、常に難しい治療選択の意思決定に直面している。
がん医療において、多くの医師が重視している治療結果は、根治可能な状況で あれば「根治」、根治不能であれば「延命」である。がん医療が目指すべき治療 結果は、人間の幸福である。生存およびQOLは、幸福に直接関わるという意味で、 真の評価項目(true endpoint)と呼ばれるが、幸福との相関の度合いは、人そ れぞれの価値観によって様々である。生存の代用評価項目である腫瘍縮小効果で 幸福を推し量ることはさらに困難である。幸福を客観的に評価する指標が存在し 得ない以上、エビデンスで万人に通用する結論を出すことはできないのであり、 結局は、個々の患者の治療目標に応じて、エビデンスを主観的に解釈する作業が 不可欠となる。
患者と医師とが明確な治療目標を共有しないまま治療を行うのでは、治療が医 師の自己満足にしかならない危険性がある。このような医師が一方的に意思決定 を行い患者がそれに従うことは、これまでパターナリズム(paternalism)とし て、できるだけ避けなければならない医師の態度とされ、むしろ患者の確かな同 意および満足度が得られるためには、患者および医師の相互参加(mutual participation)の関係が必要であるといわれている。
がん医療における意思決定は、医師が自らの専門的知識・技術を患者に提示し、 患者が自らの病気との向き合い方、治療目標、人生観および死生観を含む価値観 を医師に提示し、それらの情報にエビデンスを統合させ、両者の納得する合意に 至る、という共同意思決定(shared decision making)でなければならない。  本発表では、がん患者が自らの治療選択において医師と共同意思決定を行うに あたり、(A)がんの初発期(primary cancer)、(B)がんの再発・転移期 (recurrence or metastatic cancer)、および(C)がんの終末期(end-stage cancer)といった各患者の状況において、(a) 信頼度の高いエビデンス、(b) 医 師の専門的知識・技術、および(c) 患者の価値観といった意思決定因子の関わり について考察を試みる。

専門:医療倫理
所属:NPO法人ジャパン・ウェルネス事務局長、防衛医科大学校非常勤講師、埼玉医科大学非常勤講師

参加費:300円


◆12月例会(第196回総合部会例会)

日時:2010年12月5日(日) 15:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

アクセス:http://www.sophia.ac.jp/J/sogo.nsf/Content/access_yotsuya

演者:朝倉 輝一氏(司会:小館 貴幸氏)
演題:「みなし末期」と「尊厳死」の間で
――「福祉のターミナルケア」論争を振り返る――
要旨
1998年から2001年ごろまで『社会保険旬報』誌上を中心に『「福祉のターミナ ルケア」に関する調査研究事業報告書』(以下『報告書』)の内容をめぐっていわ ゆる「福祉のターミナルケア」をめぐる論争があった。対立点の中心はいわゆる 「みなし末期」と「限定医療」であった。その後、「福祉のターミナルケア」は 各種の「終末期医療に関するガイドライン」等の策定や日本介護支援協会の『高 齢者介護における福祉ターミナルケア・マニュアル集』などに反映されて決着を 見たかのようである。この論争を振り返ることで、残された問題点があるのか、 あるとすればどのような問題なのかを探ることにしたい。

専門:哲学・倫理学
所属:東洋大学

参加費:300円


◆11月例会(第195回総合部会例会)

日時:2010年11月6日(土) 15:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:中澤 武氏(司会 森 禎徳氏)
演題: ニューロエンハンスメントに倫理問題は在るか?
――ドイツ脳神経倫理学のトポイ――
要旨
本報告の目的は、ニューロエンハンスメント(=NE)に関してドイツで行われ ている議論の動向に注目し、脳科学をめぐる倫理的問題の所在をはっきりさせる ことにある。
脳は可塑性に富む臓器である。もしも適切な手法で脳活動に介入すれば、認知 能力やコミュニケーション能力などを意図的に改変することも不可能ではない。 現代の脳科学は、脳機能を非侵襲的に計測する手法の開発に始まり、いまや従来 の治療の範囲を超えて、脳の機能を増強する技術までをも実現しつつある。この 過程で、脳科学は、医学だけにとどまらず、心理学や教育学、経済学あるいは倫 理学の分野にまでその応用範囲を広げてきた。その一方では、脳の話題に世の関 心が集まり、「神経神話」の影響力が強まっていることも事実である。たとえば、 「脳トレーニング」のための商品が次々と売り出され、脳活(脳の活性化)を標 榜するセミナーには受講者が殺到している。NEに対する潜在的需要は、相当なも のであると言わざるをえない。
NEの技術的可能性については、生体工学を応用した侵襲的介入がまだ基礎研究 の段階であるのに対して、神経薬理学の分野では、記憶力や注意力を増進すると されるスマートドラッグの利用が始まっている。薬剤による脳機能の増強は、す でに現実の問題なのである。
このようなテクノロジーの進展に対して、NE慎重派の側からは様々な懸念が表 明されている。だが、そこで問題になっているのは、多くは法規制や社会政策な どによって解決され得る事柄であるか、あるいは、新技術の人体への応用に関す る一般的問題であり、特にNEに固有の倫理的問題が指摘されているとは言い難い。 では、いったいNEには倫理問題など無いのだろうか? もしも、この問いに接し て「そんなはずは、あるまい」という直感が働くとすれば、その直感の中味は、 どうなっているのだろうか? そこには果たして、確とした倫理問題が潜んでい るのだろうか?
本報告は、このような問いの答えを、ドイツにおける最近のNE論争の中に見出 す。その際には、要求工学で用いられる「トポイ図」を参考に、ドイツでの多岐 にわたる論点を整理し、NE問題の位置づけを明らかにする。その結果、議論は社 会論と人間学との2つの問題圏に分けられる。最終的には、NEの目的ないし価値 の中に倫理問題が見定められ、「人間としての自然」という概念の可能性と限界 が問題になる。

専門:ドイツ18世紀啓蒙研究・医療倫理・ビジネス倫理
所属:早稲田大学

参加費:300円


◆10月例会(第194回総合部会例会)

日時:2010年10月2日(土) 15:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:一戸 真子 氏(司会 小松 楠緒子 氏)
演題: チーム医療・連携時代の医療倫理
要旨
医療を取り巻く環境はめまぐるしく変化している。カルテ一つを例にとっ ても、ドイツ語で書かれていた時代から英語の時代へ、そして日本語になり、今で は電子カルテの普及により、医師の診療録、検査データ、看護記録などが複合的に 患者情報と一緒に参照できるシステムも存在している。これまでは、医師と患者関 係における医の倫理、あるいは看護師の患者に対する看護倫理といった個々の従事 者における倫理についての検討が多かったが、これからは治療においては、医師や 看護師、薬剤師や管理栄養士などとのチーム医療によるアウトカムの成果が求めら れ、検査や手術などにおいても同様にチームによる医療の質向上が求められてい る。さらに、平均在院日数の短縮や、がんを代表とする生活習慣病が日本人の死因 の上位を占めていることから、様々な医療機関間での連携や、病院と診療所の連携 が現実的となってきた。本格的なチーム医療・連携時代における医療倫理について 検討したい。

専門:医療管理学・医療政策学
所属:上武大学

参加費:300円


◆9月例会(第193回総合部会例会)

日時:2010年9月4日(土) 15:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:奥田 純一郎 氏 (司会:奈良 雅俊 氏)
演題: iPS細胞研究と法の役割
――「生命倫理と法の関係」の一般理論に向けて――
要旨
この報告では、人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究の倫理問題を検討するこ とを通じて、より一般的に、生命倫理に関して法が果たすべき役割やそのある べき指針・方向性を検討することを試みたい。
ヒトのクローン胚やES細胞を用いた研究は、その効用への期待の半面、独 立した人になりうる存在を研究利用のために犠牲にする事への、倫理的懸念 がついて回っていた。これに対しiPS細胞は、ヒトの体細胞に由来する事から、 倫理的懸念を生じることなく「期待」に応えられる存在として注目を浴びている。 しかしその多能性を利用し生殖細胞への分化を容認するに至り、iPS細胞に も倫理的懸念を向けられている。 本報告では、倫理的懸念に対する応答に 関し、法(実定法に限らず、立法論や法的思考)に何が出来るか(あるいは、 出来ないか)を検討する。特に「ヒト胚の法的(道徳的)地位」という「論争」の 本来の意味を考え直してみたい。そのことから「生命倫理と法」をより一般的 に考える手がかりを探りたい。従って報告というより問題提起に留まることを 御寛恕願いたい。

専門:法哲学、生命倫理と法
所属:上智大学法学部

参加費:300円


◆7月例会(第192回総合部会例会)

日時:2010年7月3日(土) 15:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:宮下 浩明 氏(司会 高山 裕 氏)
演題:中山間へき地の無床診療所活動の報告
―高齢者を対象とした医療活動の倫理性についての検討
要旨
過疎地域の人口は1056万人で全人口の8.3%(平成17年国勢調査)であり、 面積は204201km2で全国土の54%(平成19年10月1日)を占め、過疎地域を含む市 町村数は730市町村で全市町村の41%(平成21年4月1日現在)である。過疎地域、 へき地における地域の特徴のひとつに人口の減少が顕著であることがあげられる。
このような地域における無床診療所活動の一例をしめすことで、地域人口の減 少にともなう受診患者数の減少、受診患者の高齢化、地方交付金の補助を受ける ことで運営が成り立っているという特徴があることを紹介する。
一方、限界集落の住民の76.1%が将来においても現在の集落に居住し続けたい との意思を持っていることが確認されている。また、高齢者にあっては移動など の身体能力の低下がある。
過疎地域、へき地における医療・福祉活動に従事するものの姿勢として、居住 する高齢者の生き方に対する希望を尊重する必要があること、高齢者の弱さに対 する配慮が必要であることを述べたい。

専門:医学、一般内科
所属:新見市国民健康保険神代診療所

参加費:300円


◆6月例会 (第191回総合部会例会)

日時:2010年6月5日(土) 14:30~17:30
会場:芝浦工業大学 豊洲校舎教室棟 512教室

* 研究棟1階入り口の自動ドアが開きませんでしたら、入り口の右手に
あるインターフォンで、中にいる職員にお願いして開けていただいて
ください。
最寄駅:有楽町線「豊洲駅」1a又は3番出口から徒歩7分
JR京葉線「越中島駅」徒歩15分
アクセス:東京メトロ有楽町線の有楽町駅から新木場方面へ、
所要時間約10分で、豊洲駅下車
→(最寄駅までの案内)
→(最寄り駅からキャンパスまでの案内)
→(校内地図)

演者:岩江 荘介 氏(司会 皆吉 淳平 氏)
演題:ヒトiPS細胞研究の倫理・法・社会的側面に関する論点整理
要旨
2007年11月にヒトiPS細胞の樹立が発表されて以来、ヒトiPS細胞は再生医 療研究の中心的な存在となり、大規模な政策的支援を受けながら推進されている。 また、新しい治療方法や新薬開発への期待から、社会全体からも期待と注目が集 まっている。その一方で、再生医療研究がヒトを対象とする以上、科学的なだけ でなく倫理・コンプライアンス・社会的にも相当な慎重さをもって研究が推進さ れなければならない。そこで、生命倫理的な視点からもヒトiPS細胞研究につい て相当な質・量の議論が必要となってくる。
しかし、わが国において、この類の議論がさかんに行われてきているとは言い 難い。その一理由として、わが国では「ヒトiPS細胞研究を進める上で、どのよ うな倫理・法・社会的問題が考えられるか?」に関する議論、つまり重要な論点 を俯瞰する作業がきちんと行われてこなかったことが挙げられる。
そこで本発表では、ヒトiPS細胞研究の倫理・法・社会的側面について論点整 理を試みる。予め重要な論点を洗い出して整理し、議論のポイントを明らかにす ることにより、ヒトiPS細胞研究を巡る生命倫理的な議論の活性化に貢献できる ものと考える。

専門:医療倫理・科学技術政策
所属:京都大学人文科学研究所・研究員

参加費:300円


◆5月例会(第190回総合部会例会)

日時:2010年5月8日(土) 14:00~17:00
会場:芝浦工業大学 豊洲校舎教室棟 512教室

演者:宮嶋 俊一 氏 (司会:小阪 康治 氏)
演題:ヘッケルの優生思想と一元論宗教(仮)
要旨
エルンスト・ヘッケル(1834-1919)は、ドイツの著名な生物学者・動物学者で、専 門領域は放散虫やクラゲなどの下等海産動物の形態学・分類学・発生学であった。 イギリスのダーウィン進化論をドイツにおいていち早く受容し、それを基礎に形態 学を体系化した『有機体の一般形態学』を著した。その後一般向けの啓蒙書として 『自然創造史』、『宇宙の謎』、『生命の不可思議』などの著作を出し、いずれも 当時のベストセラーとなった。彼はダーウィン進化論に独自の思想を加え「一元論 (Monismus)」という哲学思想へと変容させそれを普及させたが、その社会ダーウィ ニズム思想は優生思想を生むことともなった。それがナチスドイツの人種主義に与 えた影響についても指摘されている。本発表では、まずヘッケルの優生思想の内容 を、次に「一元論思想」を紹介し、さらにそれを普及させるための一元論運動につ いて当時のドイツにおける宗教状況の中で考えていきたい。

専門:宗教学・死生学
所属:東京外国語大学・大正大学(等)非常勤講師

参加費:300円


◆4月例会(第189回総合部会例会)

日時:2010年4月3日(土) 16:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:黒須 三恵 氏
演題:人体組織の医学・医療上の利用について
要旨
新年度最初の例会が開催されるにあたり、例会責任者の立場から、年間テーマの趣旨説明を兼ねた発表を行う。例会の年間テーマは「人体組織の医学・医療上の利用における倫理問題」が予定されている。
そこで、昨年に「改正」された臓器移植法が本年7月に全面的に施行されることから、移植実施例の検証を含めた移植医療の倫理問題が取り上げることを期待 する。本人の事前の拒否意思表示がなければ遺族の同意で臓器提供が可能であること及び、家族への優先提供が家族内に何をもたらすか。さらに、脳死が一律に 人の死と規定されたことで脳死状態の患者家族と医療者の関係はどうなるか。
ES細胞やiPS細胞の臨床研究を念頭においた、ヒト幹細胞を用い臨床研究に関する指針の見直しが検討されている。このような細胞移植に関しては安全性 以外にどのような問題があるのか。他人の臓器に頼るため臓器不足が大きな課題となっている臓器移植に代わる医療として期待されている再生医慮の倫理的課題 についても検討の対象である。
自らの臓器等を死後も含めて提供することがなぜ、認められているか。身体論からみると、臓器等の提供はどのように理解できるのか。文明史の視点からは移 植医療はどう位置づけられるか。過渡期の医療なのか。このような課題についても議論が必要であるので、会員の方々からの積極的な演題応募を期待する。

専門:生命倫理学
所属:東京医科大学

参加費:300円

カテゴリー: 総合部会 | コメントする

2011年度

 

2011年度に行われた総合部会例会の記録

2011年度関東支部総合部会年間テーマ:「多文化社会における医学哲学・倫理」 →趣意書


◆3月例会(第210回総合部会例会)

日時:3月4日(日)15:00~17:30
会場:上智大学2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:今井 道夫 氏(司会 尾崎 恭一 氏)
演題:ニーチェの病、ニーチェの哲学
要旨
医科大学を退職するまで、私はかなりの力を生命倫理学に割いてきた。今後、 以前より関心があった医学哲学的研究を多少でも推し進めることができればと考 えている。とりあえずは、哲学・思想史的な視点から入ってゆきたい。
2年前に「ニーチェと病――ハンマーをもって哲学する――」と題して最終講 義をし、その端緒とした。ニーチェの生涯は病との闘いの連続であった。ニーチェ の哲学がその影を多少とも背負うことになったのは、自然な成り行きであった。 しかし、その哲学を彼の病の産物とするような暴論もあったため、これまで哲学 の側からそれに深入りすることには慎重にならざるをえなかった。とはいえ、そ こに由来するところのある彼の健康や病にかんする考察は注目してよいはずであ る。
ニーチェの病、その病状、病因については医学的観点からは長く議論されてき た。近年にも大部の研究書が刊行されているので、そうした文献を参考に彼の病 歴を見てみる。それを踏まえつつ、彼の哲学における彼の病の反映を検討する。 その際、哲学的内容にとどまらず、表現や文体上の特色も考慮する。なにか特別 の結論を得ることは望むべくもないけれども、哲学思想史や文化史との連関で病 気を、医学医療を考察する道を示すことができればと思っている。

所属:札幌医科大学名誉教授

参加費:300円


◆2月例会(第209回総合部会例会)

日時:2月4日(土)15:00~17:30
会場:東洋大学白山校舎 6214番教室(6号館2階)

アクセス:http://www.toyo.ac.jp/access/hakusan_j.html

演者:上原 雅文 氏(司会:関根 透 氏)
演題:日本人の霊魂観
要旨
死は必ず迎えなければならない未知の領域である。人間は自己自身の死に対す る不安や恐怖心を抱き、また親しい人の死に底知れない悲しみを抱く。死の問題 は、倫理学にとって不可欠の領域である。古来、死への不安・恐怖心、悲しみを 克服するために様々な信仰や儀礼があった。それらの前提にあるのは霊魂の存続 である。しかし、現代の多くの日本人は「無宗教」を標榜している。では、霊魂 の存続への信仰や儀礼は形骸化しているのだろうか。決してそうではあるまい。 日本人は、親しい人の死に際しての、あるいは死後の儀礼を重視し意義を感じて いる。しかし、多くの場合、その儀礼の前提となっている霊魂観を明確に自覚し ているわけではないのである。このような中で、死の問題を考える倫理学にとっ て必要な基礎作業の一つは、日本の伝統的な霊魂観を把握し、その意味について 再検討することであろう。周知のように、そこには仏教・儒教・神道のいずれの 霊魂観でもない独自の霊魂観がみられる。しかも、伝統的霊魂観の中には、霊魂 “否定”論も古くからあった。本発表では、霊魂“否定”論も含めた伝統的な霊 魂観について、「よく生きる」ことと関係させつつ考えてみたい。

所属:神奈川大学外国語学部
専門:倫理学・日本倫理思想史

参加費:300円


◆1月例会(第208回総合部会例会)

日時:1月7日(土)15:00~17:30
会場:上智大学2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:小松 楠緒子 氏(司会:長島 隆 氏)
演題:総合人文社会科学の現状と課題-6年制薬学部における試み
要旨
本発表では、明治薬科大学における総合人文社会科学の実践および今後の課題を取り扱う。今年度は、薬学部が6年制になってから、はじめての開講であった。ここでは特に、4年制時からの改定点を中心に発表する。そして、今後の課題を提示する所存である。
総合人文社会科学の概要、目的(含 就職の経緯)に関しては、『薬剤師と社会』(小松楠緒子編著)の第1章およびあとがきをもとに当日発表する(前掲書をお持ちの方はご持参ください)。次 に、6年制化にともなう変更点を挙げる。第一に、特別講師を大幅入れ替えした。基本的にコアカリに対応した布陣への改編を行った。さらに、本講義における 新たな試みとしては、テキストの作成、刊行が挙げられる。『薬剤師と社会』を北樹出版から刊行した。この他の、新たな試みとしては、有志による発表が挙げ られる。
今後の課題としては、サポート体制の充実が望まれる。参加型講義を行っているため、常に人手不足であり、教員の負担は重い。担当教員は、講義のコーディ ネイト、特別講師の接遇、印刷物の配布、カードリーダーによる出欠確認を基本的にひとりで実施している。これからは、TA等のサポートが必要である。この 他の課題としては、教育工学的アプローチによる分析、考察、発表がある。

所属:明治薬科大学
専門:社会学

参加費:300円


◆12月例会(第207回総合部会例会)

日時:12月4日(日)15:00~17:30
会場:上智大学2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:半田 栄一 氏(司会:江黒 忠彦 氏)
演題:現代の医療と禅 -白隠に関して-
要旨
現代医療の性格と現状、問題点を捉えた上で、白隠の禅と健康法について述べ、 統合医療、医療と宗教の関係について考察してみたい。
白隠は厳しい修行生活の中で、いわゆる禅病と結核を患う。種々の治療を試み たが効果なく、白幽子より神仙錬丹の極意を学び、その実践によって鍼灸や医薬 によらず治したとされる。白幽子より学んだとされる秘訣を記したものが『夜船 閑話』であるが、これは神仙思想や老荘思想に基づくものといえる。この錬丹術 は、丹田呼吸と内観の瞑想によるイメージ療法としての「軟酥の法」である。
『夜船閑話』および『遠羅天釜』は、仏教以外にも易、道教、神仙、儒教等多 様な思想や医学的身体論に基づいており、それらの思想が生かされつつまとめら れており「習合的」である。陰陽の和合により人が生じ、天の元気が全身心をめ ぐること、また孟子の浩然の気を気海丹田に収め、養うことによって、宇宙と一 である「大環丹」となること等である。禅病は「心火逆上」によって起こり、呼 吸と内観によって、気を丹田に収めることにより癒され、本来の安定した心身の 調和が回復するという。白隠は、こうした「習合的」ともいえる多様な思想や身 体的技法を学ぶと同時に、自らの治病体験を通してこの健康法を見出すに至った。 この健康法は、心身一体の行における禅本来の修証に連なっているのである。 「転々治せば転々参ぜよ。」と治病や健康法のみが目的ではなく、弁道修行をめ ざしていたのであり、治病や健康法がそのまま修証に他ならない。
白隠の禅と健康法は、現代の全人的医療の視点から重要な要素を含む。近代の 科学主義に根ざす医学は、医療と宗教・信仰を、次元を異にするものとして捉え るが、同時に心身二元論や機械論的捉え方の限界が指摘され精神医学、心理学、 内科学・生理学等において心身の相関性がいわれるようになった現代、身体に基 礎を置き、内観を説く白隠の持つ意味は大きい。また現代の統合医療の中に、白 隠の呼吸法や内観はその地位を得て生き続けている。白隠の呼吸法・内観は真正 の禅道と悟りへと導くものであり、ここから宗教体験を介した精神療法の可能性 も開かれる。

所属:元嘉悦大学講師

参加費:300円


◆11月例会(第206回総合部会例会)

日時:11月12日(土)15:00~17:30
会場:東洋大学白山校舎 6号館2階6213番教室
アクセス:http://www.toyo.ac.jp/access/access_j.html

演者:石田 安実 氏(司会:坪井雅史氏)
演題:脳神経科学における多層的説明
要旨
「脳神経倫理学」の一つの理解は、私たちの行う倫理的判断の脳神経科学的研究だが、それは、(判断という)心理的活動を脳神経に関する知見でいかに機械 論的あるいは“ボトム-アップ”で説明するか、という試みと理解できよう。それは、心理的活動に関する理論(心理学)と脳神経科学理論の間の理論間還元、 さらに前者の後者への還元による“統一理論”を促すと見えるかもしれない。つまり、脳神経科学はそのような理論間還元を必然的に含意すると考えられるかも しれない。そうした理解で脳神経倫理学を展開する論者も多い。
しかし、脳神経科学的探求は、良く見ると必ずしもそうした「統一化」を論理的に導かない。むしろ、理論的説明においては、上記のような統一理論でなくさ まざまな理論が混在することで脳神経科学が発展しているといえるのではないか。それを、還元に関する最近の議論を紹介する形で考察したい。

所属:横浜市立大学 非常勤講師
専門:専門:哲学(特に、心の哲学、認識論)、倫理学

参加費:300円


◆10月例会(第205回総合部会例会)

日時:10月8日(土)15:00~17:30
会場:上智大学2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:伊野 連 氏(司会:奥田 純一郎 氏)
演題:iPS細胞と現代再生医療の倫理性について
要旨
ES細胞[胚性幹細胞]をめぐる倫理的障壁によって行く手を阻まれていた再 生医療研究は、iPS細胞[人工多能性幹細胞]の研究・開発により新たな局面 を迎えることとなった。作成者である山中教授の京大iPS細胞研究所[CiR A]、東大、慶應義塾大、理化学研の国内四拠点をはじめ、我が国のその他の大 学・研究機関でも意気が上がっている。山中方式は米国・欧州といずれも特許を 取得し、従来の遅れを取り戻し、さらに将来は日本が世界をリードするのだとい うムードすら感じられる。
胚を傷つけることがなく、また女性に身体的負担を強いることのないiPS細胞 の登場は、たしかに現代再生医療にとっての福音とも思われる。早くもヴァチカ ンが讃意を表明し、例えば世界で最も厳しいと目されるドイツの胚保護法に鑑み ても、その健全性は保たれているかに思われた。
しかし一方で、iPS細胞のさらなる研究推進にあたっては、従前のES細胞 研究もまた不可欠であるとの指摘(いわゆる「共犯性」の問題)もある。この数 年にわたる我が国の一連のライフ・サイエンス政策の展開においても、従来激し い議論が繰り広げられてきた胚をめぐる倫理性の問題が完全にクリアーされたわ けではない。我々生命医療倫理学者にとっての課題が解決されたわけではまった くない。研究人口の急速な底上げは、確実に技術革新・技術向上へと貢献するで あろう。しかしだからといって、古代から我々に突きつけられた問いである「人 が神を演じてよいのか」について何らかの明確な答えが見出されたわけではない のである。
懸念されていた高発癌率に関してGlis-1の投入による大幅な抑制が確認 できるなど、明るいニュースも次々飛び込むなか、iPS細胞の意義をあらため て問い、またさらにその代替手段などにも目を向けつつ、現段階での最新再生医 療をめぐる倫理性の是非について検討したい。

専門:哲学・倫理学
所属:慈恵看護専門学校

参加費:300円


◆9月例会(第204回総合部会例会)

日時:9月4日(日)15:00~17:30
会場:上智大学2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:仙波 由加里 氏(司会:森 禎徳 氏)
演題:米国における補完代替医療 ― 不妊治療への利用を参考に
要旨
現在米国では、すべてのカップルの7~17%が不妊の問題を抱えているといわれている(Smith 2010, Weiss 2011)。そして近年、不妊の問題を抱える人の補完代替医療(CAM)の利用はめずらしくない。米国では不妊治療にかかる医療費が高いことから、不妊治 療に健康保険がきかない人たちの中にはCAMを使って安い費用で妊娠を試みようとする者がいる。また費用面の問題だけでなく、人工的すぎる医療介入を避 け、自然妊娠を望む人や、不妊治療と並行して、より妊娠しやすい体づくりのためにCAMを利用する者もいる。(Domar, 2006)不妊治療、とくにIVFを受けている患者の間で、伝統中国医療を利用する人が増えつつあり、カリフォルニア州は他州に比べると、不妊患者に鍼治 療や漢方(中国医薬品)を提供するクリニックが目立つ。
そこで本報告では、米国でのCAMに注目し、特に鍼治療を中心とする伝統中国医療の米国への普及の歴史や、現在、人々の間でどのくらいCAMが受け入れ られ、特にカリフォルニア州におけるCAMに関する教育や規制への取り組みを紹介するとともに、不妊治療にCAMがどのようにとりいれられているかを踏ま え、CAMの今後のあり方に言及したい。

専門:バイオエシックス
所属:桜美林大学、スタンフォード大学 客員研究員

参加費:300円

※なお今回は、在米の報告者との、インターネット通信による会議となります。ご承知おき下さい。


◆7月例会(第203回総合部会例会)

日時:7月2日(土)15:00~17:30
会場:東洋大学白山校舎 1号館6階1601教室
アクセス:http://www.toyo.ac.jp/access/access_j.html

演者:杉岡 良彦 氏(司会:森 禎徳 氏)
演題:代替・補完医療とスピリチュアリティ――科学かトリックか――
要旨
まず、代替・補完医療(CAM)がなぜ今日論じられなければならないのか、そ れを生みだす現代医学の問題点を整理したい。次に、それではCAMが、現代医学 の諸問題を解決しうるのか、その可能性を論じる(しかし実際のところ、CAMは 現代医学と同様の、あるいはそれ以上の問題点を抱えているように思える)。発 表者の問題意識は、現代医学もCAMも、共に人間(あるいは病む人)を対象とし つつも、両者の実践の根拠となる人間観が明確に意識されていないこと、あるい は、その人間観と科学の関係が明確にされていない可能性を考察する。
一方で、現代医学には、分子生物学に代表される還元主義的な方法と同時に、 集団を対象とした臨床疫学の方法がある。これらの方法は、CAMと現代医学にど のような反省を迫るのかも、特にスピリチュアリティと健康の関係を論じた論文 を具体的に取り上げながら紹介する。
最後に、今後、CAMと現代医学はどのような関係を模索するべきであるのかを、 特に患者医療者関係の視点から具体例を挙げつつ考察したい。

所属:旭川医科大学

参加費:300円


◆6月例会(第202回総合部会例会)

日時:6月4日(土)15:00~17:30
会場:上智大学2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:住吉 義光 氏(司会:大井 賢一 氏)
演題:がんの補完代替医療 ―臨床試験による科学的検証―
要旨
わが国では、がん患者の約半数が補完代替医療(complementary and alternative medicine, CAM)を利用し、ほとんどは健康食品(キノコ系)であった。
さらに、患者が知りたい情報は治療効果や副作用などであるが、医療従事者に相 談することは稀であった。患者―医療従事者のコミュニケーション不足は否めな いのが現実である。これを改善するためには、信頼できる情報を患者に提供しな ければならない。そのためにはわが国ではほとんど行われていない臨床試験によ る科学的検証が重要である。
この講演では、厚労省がん研究助成金による研究により判明したがん領域での CAMの実態、臨床試験などについて解説し、今後の展望について考察する。

(参考文献)
1.がんの補完代替医療ガイドブック
http://www.shikoku-cc.go.jp/kranke/cam/index.html
2.「がんに効く」民間療法のホント・ウソ-補完代替医療を検証する
住吉義光、大野智 中央法規出版
3.Hyodo I,et al.: Nationwide survey on complementary and alternative medicine in cancer patients in Japan.
Journal of Clinical Oncology 23:2645-2654, 2005.
4.Sumiyoshi Y, et al.:Dietary administration of mushroom mycelium extracts in patients with early stage prostate cancers managed expectantly: a phase II study
Japanese Journal of Clinical Oncology 40: 967-972, 2010

所属:玄々堂木更津クリニック

参加費:300円


◆5月例会(第201回総合部会例会)

日時:5月7日(土)15:00~17:30
会場:上智大学2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:長島 隆 氏(司会:村松 聡 氏)
演題:ドイツにおける自然療法とHeilpraktiker
    -ドイツのおける近代医学、ドイツ医師会の変遷を視野に入れて
要旨
本発表では、ドイツにおける自然療法の現在を19世紀からのドイツ医師会の 形成と近代医学の成立のプロセスから明らかにすることを目的とする。ドイツ の自然療法は近代においてはChristoph Wilhelm Hufelandらを中心とする 1800年前後の「治療」のコンセプトの争いに端を発する。「自然治癒説」と「人 工治癒説」という治療のコンセプトは現在に至るまで大きな枠組みでは変わっ ていない。この「自然治癒説」を代表したのがフーフェラントであり、ここにドイ ツの自然療法は一つの根を持っている。ホメオパシーのSamuel Hahnemann もまた意志であり、そういう意味では大きく近代医学から外れた両方ではな く、この自然療法が「民間療法」へと転換し、ある意味で胡散臭い療法へと転 じるのは、近代医学がその力を増し、ドイツにおいて医師会という形で成立す るプロセスにおいてであり、19世紀を通じての「治療の禁止」と「治療の自由」 をめぐる争いにおいてである。この争いは、結局Heilpraktikergesetzという形 で一応の決着がついた。それは、「治療の」水準、質をどのように保証するの かという問題であった。私の発表では、このプロセスをフォローしながら、「自 然療法」そのものが提起する理論問題にまで迫ることができるように努力し たいと思う。また当日いくつかの資料を配布する予定である。

専門:哲学、ドイツ観念論における自然哲学(ヘーゲル、シェリングを中心とする)および社会哲学の研究。
また応用倫理学(医療倫理、情報倫理、工学倫理、研究倫理など)
所属:東洋大学文学部哲学科教授。東京薬科大学客員教授。

参加費:300円


◆4月例会(第200回総合部会例会)

日時:4月2日(土) 16:00~17:30
会場:上智大学 2号館6階 ドイツ語学科会議室

演者:黒須 三惠氏(総合部会長)(司会 宮下 浩明氏)
演題:「多文化社会における医学哲学・倫理」
    ―2011年度年間テ-マについて
要旨
本年は11月に第1回国際大会が、本学会主催で全国大会に引き続き開催される。両大会の共通テーマが、「多文化社会における医学哲学・倫理」であり、国 際シンポジウムは「多文化社会における医療倫理」がテーマとなっている。この歴史的取り組みである両大会を内容の面からも充実させるために、総合部会でも 両大会の共通テーマである「多文化社会における医学哲学・倫理」が年間テーマとして提案されている。
また、本学会主催の公開講座が「代替・補完医療の可能性と限界の検証」のテ-マのもと、全国大会の直前に関東支部が中心となって開催される。
現代の医学・医療はいわゆる西洋の医学・医療が多様な文化や歴史の相違を超えて世界的主流となっている。その一方で、鍼灸などの伝統医療・民間療法が根 強く行われている。それらの科学的分析が進行しているが、どのような生命や病についての捉え方や倫理観に基づいて実践されているのだろうか。
患者・家族と医師・医療者との関係における倫理的在り方は、文化によってどう異なるのか。しかし、それでも貫かれている普遍的なものはあるのか。「ユネ スコの人権と生命倫理に関する世界宣言」には、人間の尊厳、人権、自律尊重、脆弱性などが掲げられている。また、いのち、身体、病、健康などは文化の相違 においてどのように理解されているのだろうか。
多くの支部会員が例会の議論をふまえて、全国大会および国際大会における発表に向け積極的に取り組むことを多いに期待する。

専門:生命倫理学
所属:東京医科大学

参加費:300円

カテゴリー: 総合部会 | コメントする

総合部会 2011年度年間テーマ 趣意書

年間テーマ:「多文化社会における医学哲学・倫理」

 本年は11月に第1回国際大会が、本学会主催で全国大会に引き続き開催される。両大会の共通テーマが、「多文化社会における医学哲学・倫理」であり、国際シンポジウムは「多文化社会における医療倫理」がテーマとなっている。この歴史的取り組みである両大会を内容の面からも充実させるために、総合部会でも両大会の共通テーマである「多文化社会における医学哲学・倫理」が年間テーマとして提案されている。

 また、本学会主催の公開講座が「代替・補完医療の可能性と限界の検証」のテ-マのもと、全国大会の直前に関東支部が中心となって開催される。

 現代の医学・医療はいわゆる西洋の医学・医療が多様な文化や歴史の相違を超えて世界的主流となっている。その一方で、鍼灸などの伝統医療・民間療法が根強く行われている。それらの科学的分析が進行しているが、どのような生命や病についての捉え方や倫理観に基づいて実践されているのだろうか。

 患者・家族と医師・医療者との関係における倫理的在り方は、文化によってどう異なるのか。しかし、それでも貫かれている普遍的なものはあるのか。「ユネスコの人権と生命倫理に関する世界宣言」には、人間の尊厳、人権、自律尊重、脆弱性などが掲げられている。また、いのち、身体、病、健康などは文化の相違においてどのように理解されているのだろうか。

 多くの支部会員が例会の議論をふまえて、全国大会および国際大会における発表に向け積極的に取り組むことを多いに期待する。
(文責:部会長 黒須三惠)

カテゴリー: 総合部会 | コメントする