2014年度の年間テーマ:
終末期における治療の中止・差し控えと、その倫理的問題
◆3月例会(第242回総合部会例会)
日時:3月8日(日) 15:00~17:30
会場:上智大学2号館13階法学部大会議室(2-1315)
アクセス:法学部大会議室(2-1315)ですが、いつも行われているドイツ語学科会議室と同じ上智 大学2号館内にあります。ただ6階ではなく13階にあり、エレベーターを13階で降りたら 右に進み、右側一番奥の扉が入り口となっている会議室です。
演者:棚橋 實 氏 演題:「精神と実証主義(承前)」について
所属:芝浦工業大学
要旨:昨学の学会の大会で論旨は発表したが、さらに詳細に発表したいという趣旨である。精神疾患の急増について、これを時代の背景と歴史的転換をふまえて考察したが、単に医学的な見地からだけではなく、実証主義的な傾向の優勢な時代にあって、精神のあり方を根本から検討したいと考えている。精神については、西欧の二元論に基づいた見方があることに留意しなければならない。それはデカルトとパスカルとの論争による精神と物質の対立からくる二元論が鮮明になるにつれて。ようやく心と物の対立において哲学の対立が顕著になった。そしてその後、自然科学の発展と共に、実証主義が世界を席巻し、この対立は深刻さを増している。ここにおいて精神のとらえ方を一層深く、明確にしたいと考えている。
参加費:300円
◆1月例会(第241回総合部会例会)
日時:1月17日(土) 15:00~17:30
会場:上智大学2号館13階法学部大会議室(2-1315)
アクセス:法学部大会議室(2-1315)ですが、いつも行われているドイツ語学科会議室と同じ上智 大学2号館内にあります。ただ6階ではなく13階にあり、エレベーターを13階で降りたら 右に進み、右側一番奥の扉が入り口となっている会議室です。
演者:小館貴幸 氏 演題:「ケアの物語としてのカレン・アン・クィンラン」について
所属:立正大学
要旨:尊厳死を考える上で決して欠かすことができないのがカレン・アン・クィンランの事例である。今から40年前、「死ぬ権利」の是非について、その裁判の行方は世界中で論争を巻き起こすこととなった。カレンの事例は、これまで法的観点や生命倫理学的観点では多く議論されてきたが、果たして生身の「人間の物語」として語られたことがあっただろうか。その判決の注目度に反比例し、人工呼吸器取外し後の9年間についてはほとんど語られることはなかった。しかし、彼女を想う人々と紡ぎ出されたこの9年間こそ、彼女の大事なもう一つの物語に他ならない。尊厳死法の提出も現実味を帯びている日本の現状を鑑みても、「尊厳死」という言葉のきっかけとなったカレンの物語を「完全な物語」として再び見直すことは決して無意味ではあるまい。本発表では、カレンへのケアに焦点を当て、特に人工呼吸器取外し後の9年間を浮かびあがらせることを意図するものである。
参加費:300円
◆11月例会(第239回総合部会例会)
日時:11月29日(土) 15:00~17:30
会場:上智大学 2号館10階ドイツ語学科会議室(6Fから10Fに移動しました)
アクセス: http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/accessguide/access_yotsuya http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/map/map_yotsuya
アクセスの際の注意: 当 日は道案内の掲示などは出ていません。土曜・日曜日は駅に 一番近い門は閉ざされています。土手沿いの道を進み、正門からお入り下さい。正門 を入ってすぐ左にある大きな建物が、2号館です。エレベーターは6つありますが、 半分(片側サイド)は5階までしか行きません。ご注意ください。エレベーターを降 りましたら、そのまま右にまっすぐお進み下さい。突き当たりの右側がドイツ語学科 会議室になります。
演者:山口育子 氏 演題:「患者・家族からの電話相談を通して見えてくる終末期における治療の差し控えや中止の問題点」について
所属:NPO法人ささえあい医療人権センターCOML
要旨:日常の活動の柱である電話相談は、24年間で総数54000件を超えています。その中には、終末期の治療にまつわるさまざまな悩みや葛藤も寄せられています。その中から、治療の中止や差し控えに関係する具体的な内容をご紹介するとともに、患者の終末期と向き合う医療者に考えていただきたい内容をお伝えしたいと思っています。
参加費:300円
◆10月例会(第238回総合部会例会)
日時:10月18日(土) 15:00~17:30
会場:上智大学 2号館10階ドイツ語学科会議室(6Fから10Fに移動しました)
アクセス: http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/accessguide/access_yotsuya http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/map/map_yotsuya
アクセスの際の注意: 当 日は道案内の掲示などは出ていません。土曜・日曜日は駅に 一番近い門は閉ざされています。土手沿いの道を進み、正門からお入り下さい。正門 を入ってすぐ左にある大きな建物が、2号館です。エレベーターは6つありますが、 半分(片側サイド)は5階までしか行きません。ご注意ください。エレベーターを降 りましたら、そのまま右にまっすぐお進み下さい。突き当たりの右側がドイツ語学科 会議室になります。
演者:町野 朔 氏 演題:「終末期医療のガバナンス」について
所属:上智大学
要旨:1. かつては、病気、加齢、死は本人とその家族、そして、彼らに近しい人たちの問題であり、基本的には私的な領域に属するものであった。しかし現在は、人々の終末に至るまでの人生に医療・福祉のプロフェッションが関わり、人々が病院で死ぬことが通常になっている。個人の死はもはや純粋に私的な問題ではなく、公的な政策決定(public policy)が要請される問題になっている。そして、終末期医療は医療の専権事項ではなく、医師と本人の「阿吽の呼吸」にのみ委ねられるものでもないのである。終末期医療においてもガバナンスが必要である。 日本では、終末期の患者について行われた医療の中止(抜管など)に対して警察が介入する事件がいくつか起こり(道立羽幌病院事件〔2004年2月〕、射水市民病院事件〔2005年3月〕)、国民の間に日本の終末期医療に対する不信を生じさせた。他方、日本の医療関係者たちの間では、日本の法状況は不明確であり、自分たちの行動が警察の介入を招くことがないか、家族などの関係者にどのように対応すべきか分からない、などの不安があり、明確なルールを求める声が上がっている。 2. 問題は2つある。第1はガバーンすべきルールの内容であり、第2はガバナンスの方法として何が適切かである。この2つは別の次元に属する問題であり、両者を混同すべきでも、融合すべきでもない。 現在は、議論の重点は第2の問題に移っている。 厚生労働省は「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」(2007年)を作った。その後、日本医師会、各医学会からも、各種のガイドラインの提言が出ている。これに対して、終末期医療のガバナンスのためには法律が必要であるという意見もある。「尊厳死法制化を考える議員連盟」は2種類の案からなる「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」を公表している(2012年)。これは、きわめて限定された範囲でliving willに法的効力を認めようとするものである。 報告者は、日本の状況から見るなら、終末期医療のガバナンスの方法としては、立法は不適切だと思っている。
参加費:300円
◆9月例会(第237回総合部会例会)
日時:9月21日(日) 15:00~17:30
会場:東洋大学白山校舎8号館(大学院棟)中2階第2会議室
アクセス:こちらを参照ください
演者:船木 祝 氏 演題:「高齢者の在宅における終末期医療の哲学的問題――地域の独居高齢者問題を手がかりにして」について
所属:札幌医科大学医療人育成センター
要旨:高齢化社会における重大な問題のひとつとして、一人暮らし高齢者の問題がある。孤独死、孤立化といった問題が社会において取り沙汰されているが、実際の高齢者一人一人がどのような思いで、どのような生活を送っているのか、その実情は十分に明確になっているとはいえない。そこで、本発表は、北海道の都市部札幌市と、全国的に見ても高齢化率が高い地域である留萌市に暮らす独居高齢者へのインタビュー調査を踏まえて、独居高齢者の現状を浮かび上がらせるとともに、そこにある哲学的問題について考察をすることを目的とする。独居高齢者は、さまざまな困難をかかえながらも、生活において工夫をしたり、バランスをとったり、周囲を観察したりしながら、当たり前の日常を送っている。そのような生活の根底にある考え方とはどのようなものか、という哲学的問題が浮かび上がる。そして、「今を大切に生きる」、「気楽な関係・場」、「人生・人間のモデル」、「現実の受容・後悔」、「他者に必要とされることの満足感」といったカテゴリーが考察対象になる。
参加費:300円
◆7月例会(第236回総合部会例会)
日時:7月6日(日) 15:00~17:30
会場:上智大学2号館法学部大会議室(2-1315)
アクセス:法学部大会議室(2-1315)ですが、いつも行われているドイツ語学科会議室と同じ上智 大学2号館内にあります。ただ6階ではなく13階にあり、エレベーターを13階で降りたら 右に進み、右側一番奥の扉が入り口となっている会議室です。
演者:三羽恵梨子 氏 演題:「治療とエンハンスメントとの道徳的差異の検討:医療者に対する道徳的負荷を手がかりに」について
所属:東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻 専門分野:医学哲学、医療倫理
要旨:本発表においては、エンハンスメント(増強的介入)を題材として、この概念の意味・射程を検討する。エンハンスメントの定義については必ずしも研究者の間で明確な一致点が見いだされているわけではないが、それが肉体的改良、知的改良、道徳的改良等の形をとることは一般的に受け入れられている。その上で、多くの議論においては、この「エンハンスメント」を「治療」と区別して、前者を許容しない立場が見られる。この議論においては、「エンハンスメント」は、身体への技術的介入という包括的な概念の中で「治療の補集合」として位置づけられる。しかし、この「エンハンスメント=治療ではない身体介入」という定義は、それ自体では何の示唆を与えるものではなく、この定義が機能するためには、「治療とは何か」という問いに答えることが必要となる。だが、この「治療の定義」自体も自明ではない。治療は、しばしば「健康を実現する/病気を除去する手段」として語られるが、その健康・病気の概念自体が文脈により揺らぎ、容易には捉え難いものだからである。本発表では、この問題関心の下で、まずは一般的な意味での健康・病気の定義に関する議論を概観した上で、医療の目的の側から治療/エンハンスメントの議論を特徴づける。これを通じて、エンハンスメントという概念を、「治療の補集合」として消極的に捉えらるとどまらず、我々が「治療」という営為に対して有している期待をあぶり出す手がかりとして積極的に用いうる可能性がないか検討することが、本発表の意図するところである。
参加費:300円
◆6月例会(第235回総合部会例会)
日時:6月7日(土) 15:00~17:30
会場:東洋大学白山校舎6号館4階6406教室
アクセス:http://www.toyo.ac.jp/site/campus/campus-hakusan.html
演者:荒川迪生 氏 演題:「安楽死・尊厳死をめぐる終末期医療の昏迷」について
所属:荒川医院、岐阜リビング・ウイルのあり方を考える会
要旨:生存の基本権とともに、死の迎え方の選択権の多様性が求められている。終末期の生存自体における不条理な苦痛を除くために、生命を意図的に短縮する安楽死がある。自発的積極的安楽死、自発的消極的安楽死を合法視する社会がある。消極的安楽死では、未だに生存が可能な疾患末期において、治療そのものが不開始・中止される。一方、自然な死を迎える尊厳死、自然死がある。そこでは死期が切迫し、もはや生存が不可能な生命末期において、単に死に逝く過程を過剰に引き延ばすに過ぎない延命措置が不開始・中止される。これは生命の意図的短縮ではなく、自然終焉である。このように死期の切迫度と治療義務の限界を考慮した場合の死の選択は許容されるべきであろう。我が国においては、死を迎えつつあるとする時期の定義があいまいなうえに、本人としては直面してもいない病態を乱暴に推定して、生存の尊卑を誇大視する風潮がある。そして、近い将来には死を避けることができない終末期の疾患末期であっても、未だ安定した相当の生活ができるにも拘らず、生きるに値する生存か否かに偏重する危うい風潮がうかがわれる。あいまいな尊厳死の美名に追いやられ、早く死に逝くことの美化は危険である。終末期にある患者とその家族に対する社会支援が不十分なこと、医療現場においても生命倫理やチーム医療が未熟なこと、司法的判断も成熟途上とも考えられる現代にあっては、まず国民の成長を促すことが肝要であり、いたずらに、解釈変更が起こりうる結論を急ぐ社会であってはならない。
参考資料:①昏迷の終末期医療 届かぬ医師のこころ 疎外される患者、岐阜リビング・ウイルのあり方を考える会編著、岐阜新聞社発行、2013年(分担執筆)➁荒川迪生、神原健治郎:自殺未遂事件に学ぶー保険給付制限と昏迷医療と司法判断、月刊/保険診療 2014;69:68-71
参加費:300円
◆5月例会(第234回総合部会例会)
日時:5月17日(土) 15:00~17:30
会場:早稲田大学 戸山キャンパス33号館7階現代人間論系論系室
アクセス: 戸山キャンパスの行き方 戸山キャンパス1 戸山キャンパス2
演者:羽金和彦 氏 演題:「終末期の現状と倫理的検討課題」について
所属:国立病院機構 栃木医療センター 統括診療部長 専門分野:小児外科
要旨:現在、日本人の8割が病院で亡くなっており、終末期に医療が関与することは当然と思われています。しかし、50年前には逆に8割が家庭で亡くなっていました。本報告では、最初にライフケアシステム(辻彼南雄代表理事)により発表された「理想の看取りと死に関する国際比較研究」を紹介します。本邦における終末期の現状と諸外国との比較が行われた研究です。次に終末期の病態を概観し、終末期に行われる医療的処置の効果と
意味について整理するために、三種類の死の軌道(trajectory):がん、心疾患、認知症に関するLynn&Adamsonの研究を紹介します。各々の死の軌跡を分けて考えることは終末期医療の倫理を考えるために必要な事と思います。さらに、医療施設で用いられている延命医療、蘇生拒否のインフォームドコンセントを提示し、各学会の終末期医療に関するガイドラインの現状を報告します。最後に死に携わる者から見た終末期医療における倫理的課題と現状を列挙したいと思います。
参加費:300円
◆4月例会(第233回総合部会例会)
日時:4月13日(日) 16:30~19:00
会場:上智大学 2号館6階ドイツ語学科会議室
アクセス: http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/accessguide/access_yotsuya http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/map/map_yotsuya
アクセスの際の注意: 当 日は道案内の掲示などは出ていません。土曜・日曜日は駅に 一番近い門は閉ざされています。土手沿いの道を進み、正門からお入り下さい。正門 を入ってすぐ左にある大きな建物が、2号館です。エレベーターは6つありますが、 半分(片側サイド)は5階までしか行きません。ご注意ください。エレベーターを降 りましたら、そのまま右にまっすぐお進み下さい。突き当たりの右側がドイツ語学科 会議室になります。
演者:奥田純一郎 氏 演題:年間テーマ「終末期における治療の中止・差し控えと、その倫理的問題」について
所属:上智大学
要旨:今回の報告においては、2014年度関東医学哲学・倫理学会(以下、本会)総合部会の年 間テーマ「終末期における治療の中止・差し控えと、その倫理的問題」について趣旨説 明と、関連する論点の提示を行う。 年間テーマは、2015年1月27日に実施される予定の日本医学哲学・倫理学会(以下、全 国学会)公開講座と同じである。今年度の本会総合部会の活動は、この全国学会公開講 座に向けての準備と、終了後に同公開講座の成果を踏まえた議論を継続するための足掛 かりを作ることを中心に行う予定である。 同公開講座の企画によれば、終末期医療における実践では患者・家族・医療従事者らの 「話し合い」が重要であるとの認識は今日共有されているが、医療従事者と患者側の情 報格差から医療従事者側の裁量権による「死の管理化」がおこなわれうること・患者本 人の意思が不明な場合の代行決定権行使者として家族が適任であるのか不明であること ・「話し合い」の形式や程度に関する具体的な基準が不明であること等の疑問点が提示 されており、その考察のために公開講座では、医療従事者(医師・看護師)、患者・家 族のオブザーバーを務めてきたNPO法人関係者の声を聴き、また全国学会会員による 理論的視座の提示を踏まえ、一般市民がこの問題に関し考察を深める機会を与える、と している。 本会総合部会としては、今年度を通じ、同公開講座企画書で指摘された論点につき議論 を深めることを中心に活動する。また同時に、企画書では直接指摘されていない論点に ついても議論を重ね、それによって公開講座の成功に寄与することを期する。例えば ・事前の「話し合い」の副作用(終末期医療の差し控えを決めた患者には、本来なすべ き治療に関しても懈怠が生じうる・あるいはそのように誘導される危険性) ・実体的な許容範囲が明示されていない手続き的「話し合い」ガイドラインの哲学的含 意 ・終末期医療に関する実体的許容範囲を定める(あるいは定めない)立法・行政の責任 ・患者本人が無能力の場合でも決定をなす場合の「代行」という法的構成の適切性 ・本人以外の者が決定する場合の「誰が」(決定主体)「どの程度」(決定範囲)問題 と、その前提としての「何故」(決定理由)問題の連関と断絶 等が考えられるが、この他にも論ずべき問題はあると思われる。年度初頭の4月例会の 議論を通じて、論ずべきこと・その程度や範囲・適切な報告者についての情報交換を行 って頂ければ幸いである。
参加費:300円